
【補助金採択事例紹介①】養鶏業から小売業へ―補助金活用で挑む多角的販売チャネルの展開
【採択事例紹介①】養鶏業から小売業へ―補助金活用で挑む多角的販売チャネルの展開
新型コロナウイルスの影響で、多くの事業者が従来のビジネスモデルを見直さざるを得なくなりました。飲食店や観光業はもちろん、食品を供給する農業・畜産業もその例外ではありません。今回ご紹介するのは、60年近くにわたり養鶏業を営んできた企業が、コロナ禍をきっかけに新しい販路を開拓し、補助金を活用して事業の再構築に取り組んだ事例です。
卸売中心のビジネスモデルが抱える課題
創業以来、地域の卵消費を支えてきた養鶏法人。約5万羽の鶏を飼育し、1日あたり4万個もの卵を生産する事業者として、地元では知られておりました。徹底した品質管理や機械化された生産体制を持ち、スーパーや飲食店などへの安定供給を行ってきました。
しかし、長年続けてきた「卸売中心」のビジネスモデルには課題もありました。卵の価格は相場に大きく左右されるため、利益が安定しにくいのです。特に夏場は需要が減少して価格が下落し、反対に年末年始などの需要期には価格が高騰するなど、収益が外部要因に振り回されがちでした。さらに、新型コロナの影響で外食需要が急減し、業務用の出荷量も落ち込み、売上は大幅に減少しました。
このままでは安定した経営は難しい。そこで経営陣は「これまでの卸売依存から脱却し、新たな販路を開拓する必要がある」と判断しました。
新たな挑戦 ― 直販と小売への転換
同社が事業再構築補助金を活用して挑戦したのは、「卵の直販事業」です。従来はスーパーなどの流通業者を介して販売していた卵を、消費者へ直接届ける仕組みを整えたのです。その具体的な取組みは大きく3つに分けられます。
1. 自動販売機による24時間販売
まず導入したのが、卵専用の自動販売機です。地域の商店街に設置し、消費者がいつでも気軽に卵を購入できる仕組みを整えました。ラインナップはブランド卵から規格外卵まで幅広く、用途や価格帯に応じて選べるよう工夫されています。特に「非対面」「非接触」という安心感が求められるコロナ禍のニーズに合致し、導入直後から地域の話題となりました。
2. 直売所の新設
次に取り組んだのが、自社敷地内への直売所の設置です。これまで事務所横のスペースを改装し、来店型の販売拠点を整備しました。卵のパック売りはもちろん、大容量での販売にも対応し、地元住民や観光客が直接購入できる場所となりました。従業員にとっても消費者と直接接点を持てる機会が生まれ、仕事へのやりがいが高まる効果もありました。
3. ECサイトによる全国展開
さらに、自社ホームページとECサイトを新たに立ち上げ、オンライン販売を開始しました。これまで「ふるさと納税の返礼品」として一定の知名度を得ていた同社の卵ですが、顧客から「ネット通販で買いたい」という声が多く寄せられていました。その潜在的な需要に応える形でのEC展開は、県外からの注文を呼び込み、販路拡大に大きく貢献しました。SNSを活用した情報発信も強化し、ブランド価値の向上につなげています。
地域に根ざした直販モデル
新たに取り組んだ直販事業は、単に販売チャネルを増やしただけではありません。自動販売機や直売所を通じて、消費者が「生産者の顔が見える商品」を手に取れる仕組みを作ったのです。これにより、消費者の信頼性が高まり、ブランド力の強化にもつながりました。
また、直売所やECサイトを通じた販売は、価格交渉や市場相場に左右されにくいという大きなメリットがあります。これまでスーパーや問屋に依存していた収益構造を見直し、自社で価格設定できる体制を整えたことは、安定経営に向けた大きな一歩となりました。
成功の要因を振り返る
この事例から学べる成功の要因は大きく3つあります。
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明確な課題認識と解決策の提示
卸売依存のリスクを明確にし、それを解決するための「直販」への転換を打ち出した点。 -
時代のニーズに合った事業展開
コロナ禍で高まった「非対面需要」「ネット通販需要」に即した販路拡大を計画した点。 -
将来を見据えたビジョンの提示
今後は「卵かけご飯専門店」「卵のサブスク」など、多角化の構想を持ち、単なる一時的な売上回復にとどまらない持続的成長を描いた点。
これらの取り組みが総合的に評価され、事業再構築補助金の採択につながりました。
まとめ
今回の養鶏業者様の事例は、補助金を活用して逆境を成長のきっかけに変えた好例といえます。コロナ禍による売上減少という課題に直面したからこそ、新しい販路の必要性に気づき、従来の枠を超えた小売展開に挑戦することができました。
事業再構築補助金の受付は終了しておりますが、「新事業進出補助金」などの新たな補助金も開始しております。
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この事例が、同じように新しいチャレンジを考えている事業者様にとってヒントとなれば幸いです!